関係者インタビュー
2017.5.16

ロボコン × 「アトム ザ・ビギニング」インタビュー(1) ~ロボコンの現場を見て感じた「ものづくり」~ 

アニメ「アトム ザ・ビギニング」(毎週土曜日夜11:00~ NHK総合テレビにて放送)のスタートに先がけて、監督の佐藤竜雄さんとシリーズ構成の藤咲淳一さんに、ロボットの未来、ロボコンの未来についてうかがいました。 高専ロボコン参加チームへ取材に行った話から、「ものづくり」の精神に迫る熱いインタビューになりました。

プロフィール

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藤咲淳一(フジサクジュンイチ) 
「アトム ザ・ビギニング」シリーズ構成・脚本

1967年生まれ。茨城県出身。監督、脚本家。「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の企画、小説、ゲーム制作に携わり、テレビアニメ「BLOOD+」では監督、シリーズ構成も務めた。主な参加作品に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」「劇場版xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢」など。

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佐藤竜雄(サトウタツオ) 
「アトム ザ・ビギニング」監督

1964年生まれ、神奈川県出身。アニメーション監督、演出家。1995年「飛べ!イサミ」で監督を務め、1999年の劇場版「機動戦艦ナデシコ」と2012年の「モーレツ宇宙海賊」で二度の星雲賞を受賞。

彼らがどんな気持ちで作っているか知りたくて

──そもそも高専に行って何を見ようと考えたのか、覚えていますか。


佐藤

とりあえず、どんな雰囲気で作っているのか、というところは知りたいですよね。
クラブ活動と言っても、ロボット作るクラブ活動って普通ないから
チームで作るってどういう段取りと言うか組織作りでやっているのか、とか。
運動部とかとぜんぜん違うじゃないですか。


藤咲

クラブ活動って言う名目とはいえ、1つのものを作るって大変じゃないですか。
それを1年生から5年生までいる中でどうやって作っていくのかなって、当然上下関係あるし、先輩後輩もいるしって中で、体育会系とはノリの違う子たちが、どう作っていくのか、というのがすごく気になっていたんで。


佐藤

そもそも、毎年テーマが違うわけじゃないですか。
テーマがそのたび違っているから、普通にその競技をして勝つのではなくて、
そのときにお題を受け取って、それからロボットを作るってところはまたぜんぜん違うので


藤咲

どう作ってるかよりも、彼らがどんな気持ちで作っているかがスゴく知りたくて。
「アトム ザ・ビギニング(以下ATB)」を作るにあたって、主役2人の大学院生、あの子達がどういう気持ちでやっているかというのを僕らは体感できないので、少しでもヒントになればなと思って、実際にロボットを作ることに情熱を燃やしている子達の気持ちが知りたい。それが一番聞きたかったことですね。


──教室でお話を聞いたり、工房も行ったんですよね、
ロボットが動いているところを見たと思うんですが、
得られたところはありましたか?


藤咲

そうですね。
面白かったのは、「ATB」に比べちゃダメですけど、予算にしろ何にしろ、思ったよりもシビアだなっていう、たとえば1000円のパーツで動くんだけど、ちょっとでも良くしたかったら、3000円のパーツにするとか、そういう取捨選択をシビアにやっているというのがスゴく面白くて。

プログラム書ける子、機械を作る子って、組み立てがみんな分業なんですよね。その中で全員が全員できるわけじゃないから、できる子探す。そういうとこスゴく面白かったんだよね。
あ、全員が全員できるわけじゃないんだ、というのが。


佐藤

あと、その年の課題、「テーマ」に関しても、アプローチの仕方が、ありきたりじゃつまらない、っていう。特に僕らが行った小山高専だったからかもしれないけど、そういう伝統があって。(注: 小山工業高等専門学校に取材協力いただきました)
なんか面白いことやんなきゃ、ダメだと。 それで負けても構わないみたいな(笑)、そういうすごい潔さがなんか。(笑)


藤咲

(笑)「記録」より「記憶」みたいな感じね。スゴく面白かったです。みんなが同じことをこう、言う。それが伝統になってんのかなって思いましたね。

実際、ロボットがいっぱいあるところを見せてもらったりして、1つ1つがアイデアの塊なんですよ。
外装の部分が雑になってたりとかはしょうがないんだけど、そういうの含めて、手作り感っていうか、あ、そうか、ロボットって手作りなんだ、って実感できた部分はスゴくあります。


──高専の取材中、学生の皆さんを見ることで、作品の中で生きてきたことって
あったりしましたか?


藤咲

実際に、ロボコン話っていうのを1話やってみたんですよ。(注:今後の放送をお楽しみに)
ただ、ロボコンそのままはできないだろう、って話もあって、いろいろ工夫したんですよ。 その時の彼らの気持ちっていうのは、そこでうまく出せているのではないかなと思います。


佐藤

う~ん。かなりちょっとその辺は膨らましてたりするんですけど。
1年生から3年生までいて、その中で誰がどういう能力持ってんのかな、という割り振りの仕方や、あと自分たちへの納得の仕方、それでもって何を作っていくのかっていう。
そのあたりは高校生、しかも高専の人達よりも、そういう意味ではかなり幼い連中たちが作っているっていうことなんで、大げさな形にはなっているけど、出せたんじゃないかな、って気はします。


藤咲

そうですね。作っていながら、ロボットに置き換えてますけど、僕らがアニメとか作り始めた学生だった頃の気持ちに戻ってみると、意外と共通すんのかな、根っこは、と思ったりしたので。

ものづくりってやっぱり根っこにあるのは面白さとか、自分が見たいものや、やりたいことを追求していくのは変わんないのかなと思って。 作っているうちに気づいた感じです。
ロボットだからってじゃなくて、あの子達を見てて改めて気付かされた気がします。

笑われてもいいからやってみよう

──ロボットが実際に動いたりしているのを見て、
どのような感想をお持ちになりましたか?


藤咲

面白かったのが、テーマをいかに効率よくクリアしていくか、それ以上にどう目立たせて記憶に残すかという工夫が、あまりにもそっちが立ちすぎてて、見ているうちに、ロボットなのに愛着が湧いてきたんですね。 動き1個とっても。

プレゼンの仕方も、慣れてるのか、高専のみんな、うまいんですよ。
こういうところを工夫してこういう風にしました、っていう以上に、アピールするポイントが、こうすると面白いと思いましたっていう部分が強くて、あ、興味の源泉っていうのは、ここにあるのかなって。
ロボットも面白かったですけど、それ以上に作っている人たちが面白すぎて、そこがすごく記憶に残ってるんですよね


佐藤

結構、地元の集まりで、出展したり、似たようなことやってるんでしょ。本当に慣れてるんですよね。特にペットボトルを使った空気圧のロボットとか、あれは一番人気あるんじゃないか、とかね。
あと、恐竜のやつ。あれはどこに持ってっても受けるんじゃないか、という。(笑)


藤咲

輪投げもありましたね。


──ロボットにも興味を持ったけど、それを作った高専生にも興味を持った、というのは面白いですね。


藤咲

ロボットのデモンストレーションを見せてもらったんですけど。
当然、ロボコンに出すやつだったんですけど、

その後に、地域のロボット交流会に出すロボットって一年生が作ってるみたいなんですよ。
そのロボットたちがやっぱりその、ちゃんとチームで作るというよりも、アイデアをいかにこう形にしていくか、っていうみたいなのがあって、ちょっと雑なところいっぱいあるんですけど、(笑)
逆にそこが、楽しいんだろうな、これ作ってて。
悩みながらも作ってみる、ってのが見えたのがすごく良かったですね。


──交流ロボコン用のロボットはサイズが小さめだったようですね。 アイデアをそのまま具現化するのに、比較的少人数でもできると聞きました。


藤咲

今、アイデアを具現化する事ってないじゃないですか。 みんな頭で思ってても形にすることって。


佐藤

どうしてもね、出落ち扱いされるんで、みんな、嫌がるんですよね。 馬鹿にされるんじゃないかとか。


藤咲

笑われる以上に、笑われてもいいからやってみよう。
逆に笑われることを快感に感じているかもしれないですね。 その、ネタ落ちでもいいからやってみよう、って。


──最近の子がそういうのを作らなくなってきている、ということですか?


藤咲

最近の子は、人前で発表するのが、好きなんですよ、多分。
YouTubeとか動画とかで、「見られたい」っていう気持ちはスゴくあるんだけど、見られる以上に、「ウケなかったら……」って考えてやめる子の方が多いのかな、って思うんですよね。

どっかで「見せたい」って気持ちはみんなあるから。
でも、出すと叩かれたりするし、それは怖いから引っ込めたりとか。
発表するって言うより、人に見せて、人に評価もらって、笑ってもらって、楽しんでもらえるというのがあって、初めてものづくりってできるわけだから、そういうところを、率先してやれる空気を作っているあの場所っていうのは、素敵だなって思ったんですよね。
しかも、条件キツイじゃないすか。 自由じゃないから。


──お金の制限もあるし、時間の制限もあるし。


藤咲

部活、学校があって、授業あって、当然、その限られた時間の中で作っていかなきゃならない、試験があったらやめなきゃいけないしとか、そういうところがあるから。
あ、試験があったらやめなきゃいけないんだって、学校だなって。


──評価されたいけれども、炎上するとか、冷たいことがあるから辞めちゃうとかっていうのは、面白いお話ですね。
何か発表する場は欲しいけれど、すぐに評価されてしまう、ニコニコ動画などで発表すると即座にテロップが流れて評価されてしまう。そこに果敢に挑戦していくんですね。


佐藤

昔だったら、5,6人、身の回りの人間が評価して、面白いねって言ってくれるものが、いきなり下手すりゃ50人、100人、200人って、全く知らない人が見ているという状況でしょう。快感になるって人もいると思えば、ビビっちゃう人もいるでしょうしね。


藤咲

味方がいたと同時に敵が生まれるみたいな感覚になるんですよね、今の時代。
向いているのが、そのモニターの向こう、ネットの向こう側にいるとは言え、その反応は必ず返ってくる。 反応をしてるのは、当然、人間なんで。
ディープラーニングされたデータの結果じゃないから。
だからそういうのを見てると、やっぱ怖いなっていう反面、それ乗り越えないと、作りたいものなんて作れないじゃないですか。
自分が作りたいものって、結局そういう批判だったり賛同の先にあるから、っていうところに、彼らは多分、リアルタイムで気づいていると思うんですよね、評価っていう形になるし、もっと、結果が形に出るから。


──「ロボコン」から「ものづくりへの姿勢」といったお話になるのは、われわれロボコンスタッフにとって、新鮮な考え方です。


藤咲

監督も僕も、物作ってるから、っていうのもあると思いますよ。


佐藤

うん、まぁ、それが仕事になっちゃってるってのもありますよね。


藤咲

もうお互いに長いですし。 叩かれようが、自分のもの以外作れないってわかってるし。

会談中

純粋でしたね 彼ら彼女ってスゴく

──ものを作っているってことで、ロボットを作ってる子達にも通底するものを感じたんですね。


藤咲

そうですね。だから一番根っこにあるものは、あぁ、ここにあるのかなってことを
すごく思ったんで。
「ATB」でも、そこをなんかできないかなって。
だから、原作っていうかカサハラさん(注:カサハラテツロー 「ATB」原作者)の漫画を読んでたときにもすごくそれを感じたんで。あの二人をどうやって書こうかって。 ロボコンの取材を見てから、その純粋な気持ちってものを、彼らは持っていたんだろうか、って思ったんですけど、そうでもないかもしれないと思いつつ、そういうところをあの取材で拾っていけたらなぁって思ったし、同時に妹の蘭ちゃんが、同じ高校生くらいって設定ですから、彼女がロボット作りにいたら多分ああいう場にいる子と同じ気持ちなのかなって、そこをうまく汲み取れたらいいなって思いました。
純粋でしたね、彼ら、彼女ってスゴく。


佐藤

体育館でロボット見せてもらった後に、教室でいろいろ部員の子たちに話を聞いたんですけど、かなり面白おかしいものを作っているんだけど、言ってることは結構まともなんで。うん。そりゃそうだろうね、っていう。


藤咲

スゴく僕らよりも先を見据えている事が多かったです。
質問した時に、もっと身近なことを言うのかなぁって思って、巨大ロボット作りたいとか。そしたら意外と真面目で、震災を見て、そう役に立つロボットを作りたい、とか。
将来見据えてるんですよね。実用って意味では。
だから僕らが申し訳なくなったという(笑)


佐藤

しょうがなく1人だけ言ってくれたね、巨大ロボット作りますって(笑)、
なんだか申し訳ないっすね、な感じで。


藤咲

向こうが大人だった気がするっていう。


──ちょっと先のロボットを見据えているんでしょうね、彼らは。


藤咲

高専生なりの先なんで、当然身近なところに限定されるんですけど。
彼らなりに一生懸命見据えた未来ってそこにあるんだなって思いましたね。


佐藤

日常に根ざした形で、そのロボットと人間の関係ってものを考えてるのかなぁって。


藤咲

ロボットがいることが自然な子供達っていうのが、たぶん今後生まれてくるし、彼らもその一部だと思うんですよね、既に掃除機がロボットみたいなもんですし。
コンピューターだってそうじゃないですか。 スマホだってそうですし、一種のロボットみたいな。
そう考えていくと、ロボットがいる環境の中で人達が作ったロボットって今後どうなっていくのかってすごい興味ありますね。



インタビューは、さらにヒートアップして、「アトムザ・ビギニング」の世界に深く入り込んでいきます! A106役の井上雄貴さんへの期待とは? 後編に続きます!

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