OB・OGの言葉
2016.11.17

今も”ロボコン”継続中!(2) — 白久レイエス樹、阿嘉倫大、中野桂樹

全ては勝つために — チーム運営・ロボット製作編

阿嘉
あと人をどう動かすか、というのも並行して分析していました。

レイエス
当時、全体で部員が30~40人いたんですけど、A・Bの2チームに分けるときに、それまでは力が等分になるように学年を均等に分散させていたんです。それを自分たちは、4・5年生の上級生チームと2・3年生の下級生チームに分けて、それぞれの下に1年生を兵隊として付けるようにしました。4・5年生でまとめたチームは勝ちに行くチームで、主戦力がみんな集まっています。

阿嘉
分けることで下級生チームにもメリットがあるんです。上級生と下級生が混ざったチームだと、上級生の方が経験も力もあるので、彼らが自分たちのアイデアを通して、下級生は言うことを聞くだけになってしまう。上がいない状況を作ると自分たちで何か考える経験が積めるんです。

中野
僕は当時1年生だったので兵隊で、レイエスチームにいました。当時はそういう込み入った話は分かっていなかったけど。

リーダーはなにもしない!?

4年生のレイエスさんがリーダー、阿嘉さんが設計、中野さんは1年生で兵隊として2人の下についていたんですよね。レイエスさんはどんなリーダーだったんですか。

阿嘉
白久(レイエス)がリーダーとしてどう立ち回るかっていうのもずいぶん考えた。

中野
この年、彼はほとんど製作していないんです。

レイエス
ロボコンはチーム戦。よくあるアート系の個人の制作物とは違う。ルールが複雑で、1人では作れないようになっている。で、これまでを振り返ると、僕の前の年のリーダーは色々兼任してた。よくあるけど、リーダーが設計もやって、更にできたロボットの操縦も自分がする、みたいなことをしていたんです。そこに問題があるんじゃないかと。

阿嘉
単純に負担がすごく大きくなるよね。

レイエス
だからチーム立ち上げの段階で「自分は何もやらない。設計もしないし、操縦もしない、加工もやらない」と宣言したんです。自分はチーム運用専属になって指揮をとる、と。

レイエスさん自身も作ることが好きなのに、そこで「作らない」という決断ができたのは?

レイエス
当時は苦しかったです。僕も最後の年と決めていたので、自分だって作りたい。でも同時に悔しいんです。最後だから勝ちたいと。めちゃくちゃ葛藤はあったけど、その年は監督をやり切りました。だからみんなが一生懸命作っているときに、一人作業を何もやらないで、つねにメモ帳を持って、進捗を把握して。

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阿嘉
自分は設計をやっていましたが、設計者って大変なんです。そのことしか考えられない。同時に複数台のロボットを作ったりしているので。ただ、よくありがちなのは、設計者が設計している間、チームが止まっているっていうこと。1年生がずっと設計図ができるのを待っていたり、同級生も「まだ設計中だから」と、極端に言うと部に来なくなったりとか。

レイエス
だから自分は監督として、設計者が設計していたら、周りを集めて他のことをやらせたりしました。

中野
2台ロボットがあったら、設計の時期をずらすようにスケジュールを組んで、1台のロボットを設計者が設計をしているときに、もう1台の部品加工をやらせたりするんです。つねに回すようにする。

阿嘉
そういうマネジメントをする人がレイエス。

一触即発みたいな。ピリピリしていました。

レイエスさん、阿嘉さん、2人の間で、言い争いや喧嘩はあったりしたんですか?

阿嘉
ごく初期は、チームの方向性をそろえるのにひと悶着ありました。みんな口では「全国優勝」って言うけど、見ている方向が完全に同じなわけではないので。

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レイエス
常に緊張していて、一触即発みたいな。ピリピリしていました。僕と阿嘉でいうと、阿嘉は設計がうまい。阿嘉はピカ一。ただ彼の設計は複雑だったんです。

阿嘉
設計って、やり出すとこだわりたくなるんです。

レイエス
・・・いいんですけど、オーバースペックといいますか。

中野
さっきの「上」「中」「下」の話の「上」を狙いがちなんです。

レイエス
すごいアイデアを出してもスケジュールにマッチしないような設計だったり運営的に実現できないようなものだったりするとまずいわけですよ。

中野
さっきの1年生が全部加工できるように、とか―。

レイエス
モーター、ギアでも色々あるけど、選択するときに作りやすさは?とか。その辺がマッチしていないときはぶつかり合いがありました。これはちょっと違うんじゃないか、とか。

阿嘉
初期は自分の作りたいものを設計したかったので・・・。だんだん馴染んで切りどころがわかっていきましたが。

レイエス
今ではその辺り、完璧だよね(笑)

>現役生へ「暇」は「毒」です

中野さんはいわゆる「兵隊」だったんですよね。ロボットを作りたいという夢を持ってロボコン部に入り、入ってみると実際は兵隊扱い、って当時はどう思ったのでしょうか?

中野
やっていることは加工ばっかりだったけど、自分でロボットを作っている感じがしていました。

レイエス
ありがちなのが、やすりがけとか細かい作業だけ1年生がやって、実際には2・3年生が難しい加工をやる・・・というケース。そうではなくて僕らのチームは、設計の段階で難しい加工を全部省いて、1年生が加工できるようにしていたんです。

中野
上級生は部屋でアイデア出しをしているので、加工場は1年生だけで作業をしている。で、普通じゃない速さで自分たちが加工した部品を先輩たちが組み立てて、ロボットの形にしていく。

半年加工して、その間に1台やっとできる、という感じだったら飽きていたと思う。僕らは1週間加工したら次の週には組み立てで、2週目にはロボットができあがっている。スピード感があった。そうすると兵隊なんだけど作っている感じがするんです。目の前で自分達が作った部品が組み立てられて、ロボットになっていくのをすごいスピードで見ているので。

レイエス
そうすると1年生もなんか嬉しいじゃないですか。上級生も「おまえらが作ったんだぞ」とか言って。

中野
その気になる(笑)僕らが作った部品でロボットができた!みたいな。

辞める原因の一番は「暇」なこと。「暇」が「毒」です。楽しくない。遊んでダベってるだけなら 帰ったらいいじゃん、って。そうじゃなくて、常に図面が山積みで、とにかく図面を片付けるのに手を動かす。もともともの作り好きな人が集まってるから・・・

阿嘉
忙しいと楽しいんです。

中野
みんなでわいわい、いくぞいくぞ、って。ただ僕らもかなり脱落者は多くて、最初20人ぐらいいたのが、最後は5夏休みも朝~毎晩までやっていたし。

レイエス
やっぱり同じようなモチベーションじゃないと、どう頑張ってもきついんです。なんか良く分からないけど、回りがめちゃめちゃ頑張っていて、期限を守らないと罰があるわけでもないのに苦しい、ということになる。

阿嘉
ロボコンじゃなくても体育会系の部活でもそうだと思います。全国優勝を目指してハードな練習をしていて、ついていけないとキツイですよね。

レイエス
学生生活ってロボコンだけではない。課題もあるし、勉強を頑張ってもいいし、好きなことをやってもいい。そこら辺のモチベーションの共有ができないと苦しそうにやめていった。僕らがこういうふうにしなければ、気楽にロボコンができた可能性はあるけど。なんのためにロボコンをやっているのか、なんでここにいるのか、とか話し合いましたね。

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すべては勝つために — 練習編

毎週日曜日は全国大会の日!

阿嘉
練習に関しての細かい話をすればかなりありますよ。ロボコンはトーナメントなので、ミスをせず4回勝たなければならない、って分かっているわけじゃないですか。ということは優勝に近づくには、練習のウエイトもものすごく大きくなる。だから全国大会を模擬的にシミュレーションしたんです。

レイエス
過去の大会のビデオを見て各試合の時間をノートに記録して、仮にトーナメントのここにいたら、第1試合が何時何分で、次の試合の時間は・・・というシミュレーションをしました。それでより体に覚えさせるために全国大会と同じスケジュールで全てを練習するんです。決めていたんですよ、毎週日曜日は「全国大会の日」って>国技館が開く時間を想定して、仮想のピットゾーンとフィールドを作って、僕はストップウォッチを持って、「あと何分で開場します」って。

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中野
操縦者はホワイトボートにひたすらタイムを書く。回路班はバッテリーの状態やトラブルの状態を記録したり。そのときのバッテリーの状態がリストになっていて、今の最高タイムはここ、みたいな。

スタートの位置も、スタートゾーンが広いので毎回ロボットの位置がずれるじゃないですか。ずれると感覚が変わってしまうので、角度を合わせるためのフレームみたいなのを持ってきて、それにあわせるんです。

レイエス
あと高専ロボコンの特徴はメンテナンスの時間がだんだん減っていくので、そこもシミュレーションしました。試合と試合の間の時間って大体決まっていて、トーナメントが進むにつれて短くなってく。だから1回戦のあとにできるメンテと2回戦のあとにできるメンテの内容は違う。整備や充電をどう組んでいくか、メンテのメニューを作りました。

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阿嘉
試合間の整備のシミュレーションも大事ですが、実際模擬試合中にトラブルも起きるわけです。そうしたら時間内に実際どれくらいリカバリーできるかどうかとか、トラブルが出やすいポイントはどこかとか、そういうところも細かくチェックしました。

中野
リトライの手順も決めていたね。審判に誰が言うかも。こういう質問で聞いたほうが審判の判断が早く仰げるとか。

阿嘉
だからきちんと練習してるところとそうでないところって、見ていれば分かりますね。

テストランはフル出力でプレッシャーを

阿嘉
テストランのリハもやったね。

・・・テストランのリハって何をするんでしょうか?

レイエス
何をどの順番でテストするか。

阿嘉
フィールドの何を確認するのか。優先順位とか決めたり、ポイントだったのはテストランを最初にやること。

レイエス
ある高専はあまり見せない、とか、やるとしても最高タイムを出さないとか、色々作戦はあると思うけど、僕らは計量計測を一番にやって、テストランに最初に応募して、できるだけ回数を稼いだ。そうするとよりフィールドを試す機会がたくさんある。

阿嘉
あと他チームにプレッシャーをかけるためにもフル出力で。「こいつらに当たったら負ける!」って思わせる。

中野
けっこうプレッシャーって大事で。北九州とか赤いつなぎで揃えてるじゃないですか。あのつなぎはチームの統一感とか、好きだから、っていうより相手を威圧して倒すためだと思う。赤の膨張色であれだけの人数が来ると強いんですよ、威嚇される。トーナメントなので緊張がダイレクトに影響してくる。

阿嘉
九州地区って、そういう雰囲気あるよね。

レイエス
ついでに言うと沖縄もこの年初めてつなぎを作ったんです。威圧感が出るように。

阿嘉
地区大会でも最速記録が出るようにしていたね。別に最速を出す必要もないんだけど、地区大会で最速記録を出して周りを動揺させる。普通に考えて本当に強いチームならテストランぐらい最初に申し込むよね。

レイエス
この辺はうまくいって、当時テストランの回数は沖縄がトップだったし、地区大会のタイムも沖縄がトップだったね。

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(続く)
今もロボコン継続中!(3)

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